NOW SEIAN
ライフスタイル編
手探りながらも運営したオンラインイベント
未知の世界から新たな可能性が広がりました
江藤小梅さん (イラストレーション領域 メディアイラストコース 4年生(当時))
堺俊輔さん (情報デザイン領域 写真コース 3年生(当時))
世界的な新型コロナウィルス感染症の流行から、私たちの行動や思考にさまざまな変化が起こった昨今。
大学でも、オンライン授業の開始や教室環境の改善、状況に応じた学内活動の制限など、政府や自治体の方針に基づいた対応を行なってきました。
このような状況下でも、オンライン上でイベントを企画、開催した学生2名にお話を伺いました!
※2021年に取材した記事です。取材時は感染症拡大防止の措置を取りながら、取材・撮影を行っています。
※この取材は取材時にはパーテーションの設置やマスク着用を行い、撮影時のみマスクを外して行われています。
仲間と一緒に楽しみながら生み出した
成安初のオンライン学生交流会
2020年2月末。新型コロナウィルス感染症拡大の影響で大学は入構禁止となり、それまで当たり前のように制作活動をしていた学生たちの姿は、学内から消えてしまいました。4月の入学式や先輩たちが後輩を温かく迎え入れる新入生歓迎会も、密を回避するために中止という状況の中、情報デザイン領域・写真コース2年生(当時)の堺俊輔くんは、2020年5月に『オンライン学生交流会』を開催しました。
「いつも仲のいい友達と『何か面白いことしたいよね』と話をしていて。そうしていると、先生や職員の方からオンライン上でのイベントの話が出るなど、いくつかの偶然が重なって。それなら、新入生歓迎会も兼ねたオンラインイベントを開催しよう!となりました」。具体的に準備を始めたのは、開催1ヶ月前の4月頃から。仲間たちと一緒に、それぞれが得意な分野を活かしながら準備を進めていき、イベントを企画したそうです。「その頃、1年生の授業をサポートするスチューデントアシスタント(SA)もやっていたので、新入生への告知はスムーズにできました」。とはいえ、オンライン上でのイベント企画は初めて。すべてが未知で手探り状態なうえ、オンライン上の空間でたくさんの人と交流するという感覚が根付いていない状況での開催に、どれぐらい参加があるか不安だったそうです。
では、具体的にどんなイベントを企画したのでしょう──。
「ビデオチャットツールを活用し、オンライン上に成安のキャンパスを再現した仮想空間を作りました。サークルやいろんなテーマの小部屋をつくり、参加してくださる職員さんや先生たちはいつも居る場所にいてもらい、参加者は各部屋に自由に入室して、中の人たちとビデオチャットで会話ができる仕組みです」。イベントは5月12日〜14日の3日間開催し、新入生だけでなく上級生の参加もあり、のべ100人以上が来場してくれたとのこと。「後から知ったのですが、実際に対面授業が開始されてから『あのイベントで一度話せてたからすぐに仲良くなれた』と言う話を後輩から聞けたのは、一番嬉しかったです」。
このイベントの成功から、8月1日には『夜のセイアン・ウォッチング』というオンラインイベントでも企画を任されることに。「職員さんから声を掛けていただいたんですが、なかなか企画が通らなくて(苦笑)。本当にしょーもないものも含めて500以上の企画を友達と出し合い、なんとか『作品展示の搬入の様子を配信する』という企画が通りました」と、笑いながら語る堺くん。いろいろと反省点はあるものの、みてくれた人からは「良かった」と言う反応がもらえたり、作品を展示してくれた作家さんからも学ぶことが多く、良い体験ができたという実感を持てたそうです。
行動制限がある今だからこそ
“活動する”ことに意味がある
一方、新型コロナウィルス感染症拡大の影響から、2020年度の大学祭は中止が決定。全国的にも悔しい思いをした学生たちが多くいる中、成安造形大学では7月頃から大学祭の代わりとなるオンラインイベント『成安フェス』の準備が進められいました。このイベントの企画・運営を担ったのは、イラストレーション領域・メディアイラストコース4年生(当時)の江藤小梅さん。彼女は、2019年度に学生会のメンバーとして活躍し、前年度の大学祭実行委員の経験もありました。
この頃、大学では対面での課外活動が原則禁止とされ、同好会の活動もできない状況下にありました。新入部員の勧誘もできず湿った空気感のある中、江藤さんは、同好会がメインとなれる企画を立案。全ての同好会に連絡を取り『成安フェス』への参加を促しました。「同好会の活動が滞っている中、活動することに意義を見出してほしかったこともあり、どんなイベントを開催するかという内容や、集客等の告知も含めて全てお任せしました。開催日までに動画作品を作って参加した同好会もあれば、ウェブツールを使って参加型のワークショップを開催してくれるところも。実際にイベントがしにくい同好会もあるので、そういったところは紹介のためのホームページを制作してくれたりと、さまざまな方法で参加してくれました」。20前後ある同好会のうち、ほとんどの同好会が参加してくれたそうです。
全ての同好会との調整や、イベントのプラットフォームとなるホームページの制作など、運営の仕事は1人で行ったと語る江藤さん。「できる部分は全部1人でやってみたいと思っていて。とは言え、先生や友人に相談することはありました。特に先生からのアドバイスや励ましはガソリンになりました」。彼女自身、全ての同好会の活動を把握している訳ではなく、全員が「はじめまして」の状態からのスタート。加えて、元々コミュニケーションに苦手意識を持ちイベント開催にも不安を感じていたけれど、積極的にコミュニケーションを重ねていくことでスムーズに準備を進める事ができたそうです。
3ヶ月の準備期間を経て、2020年10月、毎週土日の計9日間に渡り『成安フェス』は開催。各同好会も行動制限がある中でも、工夫を凝らしながら準備を整えてくれました。「このイベントに個人で参加してくださった方がいたり、企画を見てお家でハンドメイドしてみたと言う報告を貰ったり。同好会からも好評で、このイベントで開催した企画を同好会の中でもリポートしたことなど、たくさんの嬉しい報告をいただきました。何より私自身、全ての同好会のイベントに参加したので、一番楽しんでいたと思います(笑)」。
変化をプラスに捉えることで、
制作の幅は広がっていく
初めこそ未知の世界だったものの、インターネットを活用したコミュニケーションやイベントの企画運営は、デジタルネイティブ世代の2人にとってはなんなく活用でき、実践の中で不便さも感じられなかったそうです。
「対面じゃないと嫌だなぁ。不便だなぁ。と言う感覚は全くなかったです。元々そんなに人と積極的に話すタイプではなかったのもありますが(苦笑)。でも、今回のイベントの運営を通して、普段あまり話さないタイプの人や喋りかけるのに勇気が必要な方にもすんなり話しかける事ができ、新たな体験をさせてもらった気がします」と、江藤さん。イベント開催という一つの目標達成に向けて、コミュニケーションへの苦手意識を払拭できたと話してくれました。
「僕の中では、オンラインとリアルな環境の区別が明確になりました。コロナ以前では、オンラインとリアルの境界線が曖昧だったけど、今は、オンラインでの対話はリアルな対話の代替にはならないと思っています。それぞれに良さがある。特徴を理解して使い分けると楽しめるし、貴重な体験ができます。僕にとってコロナ禍は悪いことばかりではなかったです」と、現代を肯定的に捉えている堺くん。仮想空間を介することで生まれる気持ちの変化を自身の中で感じ取り、上手にツールを使い分けながら今も作品制作に活かしているそうです。
大きな生活様式の変化にも怯む事なく、新たなコミュニケーションや作品制作のカタチを生み出しながら“今”を生きる。大切なのは、どう変わったのかを悲観するのではなく、変化を受け入れながら最大限に楽しむこと。今の時代を生きる学生にとって、クリエイションの可能性は無限大に広がっているのかもしれません。
PROFILE DATA
江藤 小梅さん
イラストレーション領域・メディアイラストコース4年生(当時)
幼い頃から絵を描き、本の挿絵や印刷向きのイラストを勉強中。作品では、身近な悩みや気持ちを代弁してくれるような女の子のイラストを描いている。
堺 俊輔くん
情報デザイン領域・写真コース3年生(当時)
美術系高校時代の専攻がきっかけで写真に出会い、写真を使った作品制作を行う。面白いと思えることにはジャンルの垣根を超えて興味を持ち、自身の制作にも生かしている。
2021 10/22