CULTURE NOTE
滋賀県の魅力が感じられる
日常の風景3選
地域の魅力をさまざまな方法で日々探していると、そこにしかない風習や言葉、モノ、食、暮らしが溢れ出てきます。それは自身の考え方を変革させ、新しい創作に繋がります。滋賀県は琵琶湖を中心に四方を山に囲まれた環境。自転車で湖岸や林道を走ることで、そのことを再認識し、色々な感覚が呼び起こされ、創作意欲を駆り立ててくれます。そして、日々の生活と素材が重なったとき、なにか作品のようなものが生まれる可能性があります。
石川 亮さん
地域実践領域 共通教育センター 准教授 /美術家/附属近江学研究所 研究員
2021年、『Soft Territory かかわりのあわい』(滋賀県立美術館)関連展示にて、地域実践領域から滋賀県の特色や潜在能力を表した《MUSUBU地図 vol.3》を発表。近年、宗教民俗学者や環境システム工学研究者との共同研究に取組み、美術表現の新たな可能性を模索している。
全体-水(近江の水源)2012〜
滋賀県の約120箇所に点在する湧水を一つに集める装置作品。球形に凍らした湧水は、地図の位置関係と合うように配置しています。ひとつ一つに名前のある氷の湧水はゆっくりと溶け、やがて混ざり合い、台からあふれだします。下の水槽に流れて溜まり、ひとつの名も無い水となります。湧水を汲みに行くことから始まり、ひとつの水になるまでの様子を見届ける作品です。
仰木から坂本へ抜ける林道
大学のある仰木地区から比叡山の裾野に通る林道を自転車で走り抜けます。澄んだ空気をたっぷり吸い込むなか、風が吹き、木々の揺らめきを感じながら無心でペダルを踏むと、日頃のモヤモヤなどが一気に吹き飛びます。ここを抜けると西教寺や日吉大社に抜け、日本の歴史の大舞台を感じることができます。
棚田、道、山
仰木地区の神社をお参りしたあとは、棚田の風景を横目に、長い下り坂を進む道へ。遠方に見える比良山系を仰ぎながら隣の集落の神社まで一気に駆け降ります。時々、この風景に虹がかかることがあり、季節によって色とりどりの風景を楽しむことができます。
琵琶湖と自転車
旧街道から湖岸に出ると所々に休憩のできる公園があります。ここで石に腰掛けて、琵琶湖と愛車を眺めながら途中で買ってきた手作りパンを食べるのが好きです。目の前の琵琶湖はいつも違う表情を見せてくれ、自分のなかの“何か”を呼び覚ませます。走ること、食べること、景色を眺めることは新しいことを思いつくきっかけになり、来るべき新しい社会を想像させます。
2022 09/26