Follow Seian

SEIANOTE

成安で何が学べる?
どんな楽しいことがある?
在学生の制作活動から卒業後の活動までを綴る
「SEIANOTE(セイアンノート)」です

ABOUT

思いがけない出会いがある 京都のおすすめ本屋さん3選

CULTURE NOTE

思いがけない出会いがある
京都のおすすめ本屋さん3選

本屋には出会いがあります。店主の好みや並べ方、本を紹介する“ポップ”に誘われて、思いがけない世界に出会えたり……。何より、あの紙と印刷物特有の匂いに包まれて、考えやイメージがポジティブに転がっていく感覚は気持ち良いものです。

< 推薦者 >

馬場晋作さん

美術領域 准教授/美術家

京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程絵画専攻油画修了(芸術博士)。写真や映像の影響を受けつつ変化する絵画の方法論を通して、今日的な視覚のあり方を研究、提示。


「交錯と転換のドローイング」(2018) 
Photo:奥村元洋

京都の本屋さんといえばココ
「恵文社 一乗寺店」

一乗寺にある私の本屋原体験の場所。柔らかい光の中、本棚に並ぶ背表紙の彩りにワクワクしたかつての感覚が今なお残っています。雑貨やギャラリーも併設され、長時間過ごせる居心地の良い場所。限られたスペースで充実した本がセレクトされている、京都本屋の中心的な存在です。恵文社の元店長がオープンした「誠光社」も素敵な本屋。

恵文社 一乗寺店

京都市左京区一乗寺払殿町10
TEL:075-711-5919
営業時間:10:00〜21:00(年末年始をのぞく)
定休日:年中無休(元日を除く)
http://www.keibunsha-store.com/


芸大生必見の美術書籍専門店
「Artbook Eureka
(アートブック・ユリーカ)

五条にひっそりと店舗を構える美術書籍専門店。海外で出版された質の高いビジュアルブックをセレクトして販売している芸大生必見の本屋。残念ながら町家を改装した実店舗の営業は不定期で、ネット販売が中心。でも月1回の即売会や街中の展覧会などに出張店舗を出したりと、調べてみると出会いの機会は意外と多い!?

Artbook Eureka(アートブック・ユリーカ)

京都市下京区麩屋町五条上る下鱗形町535
販売は主にオンライン。不定期にてアート好きのための展示即売会「Eureka Book Show」を開催。開催予定日等の詳細はwebサイトにて。
https://www.artbook-eureka.com/


大型書店ならではの“本のハシゴ”体験
「丸善 京都本店」

梶井基次郎の小説『檸檬』で知られる老舗書店。一時期閉店していましたが、2015年に復活しました。小さな本屋での出会いも楽しいですが、目的の作家がいるなら大型店舗も外せない。気になる作品の参考文献をペラペラめくりながらその場で関連図書に出会えるし、書店内でハシゴができる! 洋書も充実しているのが嬉しい。

丸善 京都本店

京都府京都市中京区河原町通三条下ル山崎町251 京都BAL 地下1階〜地下2階
TEL:075-253-1599
営業時間:11:00〜21:00
定休日:無休(年末年始を除く)

卒業制作展2018レポート 【総合領域編】

REPORT

卒業制作展2018レポート Part1
“あるといいな”をかたちにする総合領域編

総合領域デザインプロデュースコースってどんなところ?

デザインやアートの世界を広く知り、埋もれた価値を見つけ出し、さまざまなモノ・コト・をむすびつけ、ひとつの何かにまとめる。それを社会に伝えていくのがデザインプロデュースです。制作する「作品」自体に最終目標を置くのではなく、企画やアイデアを練り上げ、コミュニケーションをとりながら、社会に提案していく力、伝えあう力を、4年間で学びます。
*総合領域は2018年度より、「デザインプロデュースコース」から「総合デザインコース」に改変し、カリキュラム内容も変更されています。

短歌の面白さ、楽しさをアニメーションに?

卒業制作展2018で発表された作品から、いくつかピックアップして紹介していきます。

優秀賞「tankanime」(中塚美里さん)。「tankanime」とは、短歌とアニメーションを組み合わせた造語。何気ない日々の一瞬を切り取る現代短歌にスポットをあて、夜が明けてから日が暮れるまでの時間帯のなかで6つのアニメーションが繰り広げられる作品です。

5・7・5・7・7のわずか31音で構成される短歌には、ひとつの物語ほどの情報量が詰まっている……そんなことに気付かされ、短歌という言葉を研ぎ澄ませた表現に興味が湧いてきます。

新たな価値を生み出す小さな展覧会

奨励賞「写真家アルベルト・レンガー=パッチュについて」(張 寿響さん)。

20世紀前半にドイツで活躍した写真家アルベルト・レンガ―=バッチュを研究し、文献や作品、自ら執筆した研究論文や年表などが自作の棚に展示されています。この6面の棚でひとつの展覧会が行われているようでした。

興味を持ってもらう”入り口”が整えられた
トータルデザイン

佳作「土−陶−茶 つながり、広がる記憶」(久次凪沙さん)は、成安造形大学がある滋賀県の文化と土の関わりをリサーチし、関連性をまとめたリーフレットと資料を展示。

信楽焼の原料となる粘土層の土や、近江茶などが、博物館の展示のようにわかりやすくデザインされ、思わず「ふむふむ、なるほど」と見入ってしまいます。

制作プロセスはプロの現場に近いかも?

12ヶ月の誕生花をモチーフにした和菓子パッケージの提案「はなきり」(谷口彩香さん)。

福井県敦賀市の魅力をPRしつつ、地元の子どもたちに生まれ育った故郷を大好きになってもらう目的で考案した「福井すくすくアートプロジェクト」(濱野諒子さん/龍門さくらさん)など、4年間で見つけた各自のテーマを掘り下げ、提案・実施を行う総合領域の展示はジャンルレス。

助成金を受けて実施した地域プロジェクトのプレゼンテーション、子どもたちを対象にした教材キットの提案、実際に制作・運用されたスイーツショップのPRツールなど、企画・リサーチ・デザインを独自の視点で掘り下げたものが展示されていました。
 グループワークも多い総合領域らしく、なかには他領域の学生に写真やイラストを依頼して制作されたものも。プロフェッショナルな現場では、その道のプロに依頼してものづくりを行うことが一般的。プロジェクトともなると、多くの人が携わります。目指すゴールに向けてスタッフを束ねて導く能力も、プロデューサーやディレクターに求められること。学生時代にそういった経験が積めるのは貴重かもしれません。

取材日:2018/02/11
取材・文:小西七重
写真:加納俊輔