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SEIANOTE

成安で何が学べる?
どんな楽しいことがある?
在学生の制作活動から卒業後の活動までを綴る
「SEIANOTE(セイアンノート)」です

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セイアンアーツアテンション14「Re:Home」レポート 後編

REPORT

【キャンパスが美術館】展覧会レポート

学び舎の軌跡を振り返りその先の未来を想う
セイアンアーツアテンション14「Re:Home」
後編

開学当時の歴史を理解しながら展覧会を楽しむ

成安造形大学の歴史は、1920年(大正9年)に創立された成安裁縫学校が始まりです。創設者の瀬尾チカさんは、裁縫技術を身につけることで女性の自立を促し、広く社会で活躍できる人材の育成に取り組みました。
この頃の日本は和装が主流でしたが、1920年頃から洋服を着用するモダンボーイ・モダンガール(通称:モボ・モガ)が現れ始めます。同時に、男性中心の世界から女性が新たなライフスタイルを見つけ出すという時代の中にいました。「家」という枠組みに捉われない、新しい女性像を広める挑戦です。

後編では、大学が歩んできた100年の歴史とコスチュームデザインコースOB・OGによる展示レポートです。「母校=家」、また、衣服を人を環境から守る一番小さな「家」と考えると、新たな視点が生み出されるのではないでしょうか。

モボ・モダ時代に活躍した
学祖の想いが現代に活きる



京都の夏は、今も昔も変わらず暑さが厳しい。今でこそ半袖・ノーネクタイのクールビズが当たり前になりましたが、当時の洋装は、ジャケットにネクタイが基本の時代でした。
そんな中、ジャケットを脱ぎ捨てネクタイを外し、襟元を開けた「開襟シャツ」を普及させる運動がスタート。京都では「京都開襟クラブ」が結成され、成安女子学院は開襟シャツのパターン(服の設計図)の考案と受注製作を行なっていました。

このような背景を記録した「京都成安女子学園60年史」には、開襟シャツのパターンが残されていました。
この当時と同じパターンを使い、学生達が新たな感性を加えて復元した開襟シャツを制作し、「百年後も思ふ。」と題された色とりどりの開襟シャツは、スパイラルギャラリーの2Fに展示されました。

シャツのそばには、プロジェクトに参加した学生達の言葉。2mの布を無駄なく設計されたパターンから、資源を無駄にしない当時の考え方を理解し、ドキュメンタリー映像からも参加した一人ひとりが学祖の想いを受け継ぎ挑戦したことが伺えました。



学び舎から巣立ち、
社会で活躍するOB・OGたち

「開襟シャツ」が展示されるスパイラルギャラリーには、卒業生である明石麻里子さん、谷藤百音さん、佐々きみ菜さん(3名ともコスチュームデザインコース卒業生)の作品も展示されました。
3名は、布を裁断して縫うのではなく、オーガンジーをあぶる、グルーガンで描く、モールを繋ぎ合わせるなど、それぞれの手法でテキスタイルを生み出し、服飾やオブジェ作品を制作。小さな素材を繋ぎ合わせて作られた作品は、完成までにどのくらいの時間が費やされたのでしょう。コツコツと積み重ねることで完成した美しい作品は、私たちの日常にある小さな営みの尊さを感じさせてくれるようにも思いました。


久保李緒さん

内野菜摘さん

河原林美知子さん

小角綾さん

加藤沙知さん

梅林夕乃さん

大野知英さん


カフェテリア結では、ビニールや金属、紙、ゴミ処理される予定だった布の端や糸くず、髪の毛といった、服には使われない素材を使用した作品が集められ、梅林夕乃さん、大野知英さん、河原林美知子さん、久保李緒さん、内野菜摘さん、小角綾さん、加藤沙知さんの卒業生、教員7名による作品が展示されていました。



会場の一角には、コスチュームデザインコースの活動を発信するファッションサークル『美菖蒲』が制作したスライドも。通常、展示やファッションショーで見ることしかできない作品を試着してもらうというコンセプトで、2枚のスクリーンの間に立つと映像で衣装を試着できる仕組みです。試着した自分の姿は、鏡で確認することもできました。

開襟シャツの展示構成やドキュメンタリー映像、後述するギャラリーウィンドウの写真や動画制作を行なったのも同じサークルです。今年5月に結成されたばかりのサークルですが、フリーペーパーの発行やファッションショー『SEIAN COLLECTION』にも関わる予定で、今後の活躍に期待です。



ギャラリーウィンドウは、個展形式で展示された岩﨑萌森さんの作品。織る・編む・結ぶというテキスタイル(布)の基本動作を連続し、ミシンや型紙などは一切使用せず、麻糸と細く切られたポリエステル素材を手作業で編んでいくことで作られています。壁面に飾られた《制限と可能性》、窓際の《反と角》は、コロナ禍のステイホーム中に木枠機(編むための枠)を身の回りにあるもので自作するところから始めた作品。制限がかかる中でも制作を止めず、新たな可能性を切り開いた彼女の作品から、美しさだけでなく力強さと温もりも感じました。



最後に忘れてはいけないのが、バスストップギャラリー。京都成安学園が歩んできた100年の道のりが、年表やアーカイブ動画にまとめられ紹介されました。なかでも長岡京にキャンパスがあった時代、平安神宮や建仁寺などの文化的価値が高い場所でファッションショーが行われている映像は衝撃を覚えました。過去の歩みを参考に、この先100年の秘められた学び舎の可能性を想像すると、未来がより一層楽しみになります。

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